第13章 Invariable
「悪い、テーブルの上の書類、纏めてそっちに置いてくれないか?」
キッチンから声をかけると、岡田がテーブルの上に散らばった書類を、パソコンデスクの上に一纏めに置いた。
俺は空いたテーブルに、コンビニで買い込んだ摘まみとビールを並べた。
「よし、明日は休みだし、飲もうぜ?」
「そうだな」
岡田がソファーに腰を降ろした。
智君のお気に入りの場所…
そこに岡田が座っているのが、何とも不思議な感じがして、俺はその横に腰を降ろすのを一瞬躊躇ってしまう。
自分の家なのに…
「どうした? お前も座れよ」
いつまでも立ち尽くしたまま、動けずにいる俺の手を、岡田の手が引いた。
「あ、あぁ、うん…」
俺は岡田に引っ張られるようにして、ソファーに身を沈めると、缶ビールのプルタブを引いた。
「じゃ、お疲れ…」
「お疲れ様…」
お互いの労をねぎらいながら缶をぶつけ合う。
俺の横で岡田が、それは美味そうに喉を鳴らした。
それを俺は、缶を手に持ったままじっと見ていた。
「どうした? 飲まないのか?」
「いや、飲むよ? 飲むけどさ、なんか変な感じだな、と思ってさ…」
本当ならそこに座っているのは岡田じゃなくて、智君なのに…
ともすれば岡田に重ね合わせてしまう智君の幻を、まるで吹っ切るように俺はビールを一気に煽った。