第13章 Invariable
車を走らせ着いた先は、岡田が行きつけにしていると言うラーメン屋だった。
カウンターし席しかないその店は、年老いた店主が一人で切り盛りするには丁度いい狭さで、俺達は店の一番奥のカウンター席に並んで座った。
客は俺たち以外にはいない。
貸し切り状態だ。
「ラーメンでいいよな?」
岡田が慣れた様子で注文をする。
「よく来るのか?」
俺が聞くと、岡田は”まあな”と笑って見せた。
程なくして俺達の前にラーメンの丼が置かれた。
岡田が俺に向かって割り箸を差し出す。
俺はそれを受け取り、両手を合わせた。
「いただきます」
蓮華でスープを少し掬い口に含むと、途端に懐かしい味が口の中に広がった。
「どうだ? 美味いだろ?」
岡田が自信ありげにニヤリと笑う。
「あぁ、美味いな…」
それからは俺の箸は止まることなく、気が付けば丼の中にはスープすら残っていなかった。
「ご馳走様でした。とても美味しかったです」
店主にそう告げると、店主は無数の皺を蓄えた顔を、更に皺くちゃにして頭を下げた。
「ここな、今の事務所入りたての時よく通ってたんだわ。…ほら、あの事務所、仕事量の割に薄給だろ?」
確かにな…
残念だけど、それは否定できないな。