第12章 Reunion
「まだ終わらんのか? さっさとしろ」
動きを止めてしまった俺達に、刑務官の怒号が響き、松本の顔が険しく歪む。
「どうすんだよ…」
俺は刑務官の様子を横目で伺いながら、松本の脇を肘で突いた。
「うっせぇ…黙っとけ…」
松本が工具箱の中にドライバーを戻していく。
その手は、僅かだけど、震えているようにも見える。
どうするつもりだ?
「終わりました。問題はありませんでした」
顔を上げ、姿勢を正す松本。
「お前っ…」
言いかけた俺を、松本の視線が制する。
黙れ、と…
結局俺と松本は、ドライバーの不足を伝えることなく、工場を後にした。
工場から雑居房のある棟までの道程、俺と松本は言葉は愚か、目を合わせることもしなかった。
いや、しなかったわけじゃない。
松本の目を見ることが出来なかったんだ。
その目が、あまりにも怒りにも似た何かに震えていたせいで…
それにしても何を考えている?
このことが明るみに出れば、遅かれ早かれ騒ぎになるのは、十分すぎるほど解っている筈だ。
下手すりゃ懲罰だって免れない。
なのに何故?
俺に”黙れ”と言ったあの目。
明らかに動揺していた。
松本、お前は何故…?