第12章 Reunion
俺と松本が工場に戻ると、他の受刑者達は既に作業を終えたらしく、俺達には工具やらの確認作業が課せられた。
ここではそれこそ釘一本に至るまで、厳しく本数チェックをする。
たとえ長さ数センチに満たない程の小さな釘だとしても、ともすればそれは凶器にもなり兼ねないし、脱獄を図るためのに利用されることだってある。
俺のように自ら命を絶とうと考える奴だって、いないとは限らない。
いつもは部屋長である松本と、もう一人別の部屋の長が行う重要な作業だ。
当然だが、俺達の行動の全ては、四方に配置された刑務官たちの監視下にある。
もっとも、俺は勿論だが、…おそらく松本も工具をくすねようなんてことは、微塵も思っちゃいない。
俺と松本は二人で手分けをして、慎重に慎重を重ねながら、点検作業を行った。
「…ん?」
隣で松本小さく首を傾げる。
「どうした?」
「いや…これ…」
松本が俺にドライバーが入った工具箱を差し出す。
「一本足んねぇ…」
刑務官に聞こえないよう、松本が最大限に声を抑える。
「マジ…かよ…」
俺は受け取った工具箱の中身を全て作業台に一旦出すと、それを数え始めた。
ドライバーの数は24本。
本来25本なければいけないドライバーが、一本足りない。
俺達は無言で顔を見合わせた。