第2章 Crime
「大野智だな?」
「ああ、そうだけど…一体何なの?」
「ちょっと署まで同行願おうか…」
「えっ、ちょ、ちょっと待ってよ? …離せってば!」
俺の両腕を二人の警官の手が掴んだ。
それを何とか振りほどこうと手足をばたつかせる俺を、背後からもう一人の警官ご羽交い締めにした。
「大人しくしろ!」
威嚇とも言える声に、小さな紙袋が俺の手から零れ落ちた。
「あっ…!」
俺は咄嗟に警官の手を振り解き、地面に向かって手を伸ばした。
その時、俺の腕が警官の頬を掠めた。
「コイツッ…!」
警官の呻きが聞こえた瞬間、俺の身体は冷たいアスファルトに叩き付けられた。
警官の一人が馬乗りになり、俺の両手を後ろ手で拘束すると、そこに手錠をかけた。
「公務執行妨害で現行犯逮捕する!」
マジ…か…
予期せぬ事態に、顔を上げた瞬間、視界に飛び込んできた翔の泣き顔。
何事かと集まった野次馬の中に、翔の姿を見つけた。
翔…
俺、どうしたらいい…?
抵抗さえ出来なかった。
翔の目の前で俺は、数人の警察官に引き摺られるようにパトカーに乗せられ、警察署に連行された。
道端には、踏み付けにされ、無残にもボロボロになった紙袋だけが残されていた。