第11章 State
「お前には関係のないことだ。さっさと行け」
忌々し気な口調で言い付けると、二宮が肩を竦めて見せた。
そして再びワゴンを押した。
けど、数歩進んだ所でピタリと足を止め、俺達を振り返った。
「ソイツ早く返して下さいね? 点呼間に合わないと、私らおあずけ食らっちまいますから」
二宮が唇の端を少しだけ上げ、ニヤリと笑う。
「あぁ、それと…」
「なんだ…」
「ソイツあんま虐めないでくださいね? 私らの大事な玩具なんですから」
二宮がククッと喉を鳴らして笑う
「…相変わらずあざとい奴だ…」
一つ舌打ちをした坂本が、俺の肩を掴み壁に押し付けた。
そして俺の肩口に顔を寄せると、耳元に低く囁いた。
「今日の所はとんだ邪魔も入ったことだし、これくらいにしといてやるよ。だがな次は覚悟しとけよ? 存分に楽しませて貰うからな? …独房でな?」
肩を壁に押し付ける手に力が込められる。
「は、放して下さい…」
俺の顔が苦痛に歪むのを、まるで楽しんでいるかのように坂本の顔に笑が浮かぶ。
その時、夕食の時刻を知らせるチャイムが雑居棟に響いた。
「ま、それまではせいぜい楽しむんだな、アイツとの時間をな?」
マサキのことを言っているのか…?
一体コイツはどこまで俺のことを知っている…?