第11章 State
困惑する俺を見兼ねたのか、井ノ原が俺の肩を叩いた。
「まあ、深く考えるな。それより、晩飯までは許可貰ってるから、もう少し休め」
そう言って井ノ原がベッドの周りをカーテンで仕切った。
カーテンの向こうで井ノ原が椅子をキッと鳴らした。
一人になった途端、井ノ原の言葉が頭を過ぎる。
『アイツは不器用な奴だから、愛し方を知らない』
井ノ原は俺にそう言った。
そして、
『お前が思ってるほど、アイツはお前のこと嫌っちゃいないよ?』
とも…
アレは一体どういう意味だったのか…
まさかな…
そんなことある訳ねぇよ…
考えれば考える程、ぐちゃぐちゃに絡まった糸は解ける所か、余計に絡まって行く。
俺は布団を頭までスッポリと被ると、吸い込まれるように眠りに落ちた。
「時間だぞ? 起きろ」
軽く肩を揺さぶられ、重い瞼を持ち上げた。
「…時間、か…」
まだ軽く痛みの残る身体を起こし、ベッドを降りると、足元がふらつく。
「おっと、大丈夫か?」
危うく倒れそうになるのを、井ノ原の腕が支えた。
「大丈夫だよ…」
肩と腰に回った井ノ原の手をやんわりと払う。
その時、医務室のドアがノックされた。