第11章 State
「作業に戻らないと、懲罰だけど…いいのか?」
二人の押し問答に終止符を打ったのは、長野のその一言だった。
「…分かったよ。戻るよ」
渋々と言った様子でマサキが落とした肩を、長野がポンと叩く。
「井ノ原先生、後は宜しくお願いします」
長野が井ノ原に向かって敬礼をする。
「おい、井ノ原! サトシに変なことしたらオレが許さないからな! 分かったか!」
”変なこと”って、どんなことだよ…
「お前は馬鹿か? 俺がそんなことするように見えるか? まったく…」
井ノ原がやれやれと肩を竦めて見せる。
「サトシ、変なことされそうになったら大声で助け呼ぶんだぞ? 分かったな?」
俺、子供じゃないけど…
「ほら、行くぞ? 来い」
長野がマサキを引き摺るようにして、二人が漸く医務室から出て行くのを、俺と井ノ原は半ば呆れた様子で見ていた。
「お前、えらいのに懐かれたもんだな?」
乱暴に閉ざされたドアに視線を向けたまま、井ノ原が揶揄うように言う。
まったくだよ…
でも、マサキの気持ちは正直嬉しくもある。
「さてと、煩いのがいなくなったことだし…」
井ノ原の手が俺のズボンにかかった。
「自分で出来るから…」
例え治療の為とはいえ、やっぱり脱がされるのには抵抗を感じないわけじゃない。
「そっか、そうだな…」