第11章 State
マサキの背中におぶさったまま倉庫を出た俺達の前に、まるで待ち構えていたかのように刑務官が立ち塞がった。
驚いたマサキの足が、一歩、また一歩と後ずさる。
「そんな怯えた顔するなよ。医務室だろ?」
刑務官の長野だ。
強面の刑務官が多い中でも、色白で刑務官らしからぬ風貌の長野が、マサキの肩口に乗せた俺の顔を覗き込む。
「また酷くやられたもんだな? 着いてこい」
長野は刑務官なんて職の割には気弱な奴だ。
どうせ松本に脅されでもしてんだろうな…
つくづく根回しの良い奴だ…
そんなことを考えているうち、マサキの背中の心地よさと、身体の痛みに、俺の意識は徐々に遠くなっていく。
時折マサキが心配そうに背中の俺を振り返っては、明るい笑顔を見せてくれるけど、それすらも歪んで見える。
俺はマサキの背中から揺り落とされないよう、首に回した手をしっかりと握った。
長野の先導で医務室へ着くと、そこには既に医務官の井ノ原が白衣を纏って待機していた。
「松本から話は聞いてるから、お前は作業に戻れ」
「でも…っ!」
「いいから、ここは俺に任せろって、な?」
俺をベッドに降ろしてもなお、俺の傍を離れようとしないマサキを何とかなだめようと、井ノ原が言いくるめる。