第11章 State
独り言のように呟いた言葉に、マサキが顔を上げる。
そして俺の身体をその胸に抱き寄せると、俺の肩口に乗せた首を、静かに横に振った。
「ダメだ…、サトシはそんなこと考えちゃダメだよ…」
そう言ったマサキの声は、いつもの、暖かい包み込むような声だった。
「しねぇよ…。俺にはそんな根性ねぇしな?」
本音を言えば、ここで問題を起こせば、更に刑期が伸びるだけ…
そしたら翔に…
そのために俺は…
「ごめんな、マサキ…」
「オレこそゴメン…。でもオレ、サトシのことマジだから…」
知ってるよ、マサキ。
でもゴメン…
俺、答えらんねぇや…
マサキの腕が解かれ、俺の身体から離れ、下着とズボンを俺の足に通すと、その場に背を向けてしゃがんだ。
「井ノ原先生んトコ連れてくから、乗って?」
「いや、歩けるし…」
戸惑う俺に、ホラと言わんばかりに笑顔で振り返る。
清々しい程の、明るい笑顔で…。
「…悪ぃな…」
俺は痛む身体を起こして、マサキの背中におぶさった。
細身だけど、広い背中。
そこに頬を埋めると、マサキの鼓動が伝わってくる。
「しっかり捕まっててね?」
「あぁ。お前こそ落とすなよ?」
俺はマサキの首に腕を回した。
「あったり前でしょ? じゃ、行くよ?」
マサキが立ち上がると、いつもより少しだけ景色が違って見えた。