第10章 Testimony Ⅱ
「大丈夫か? 櫻井」
助手席のシートに深く身体を沈めた俺を、運転席に乗り込むと同時に岡田が覗き込む。
「なんならこのまま直帰してもいいんだぞ?」
「あぁ、頼むよ…」
「Ok、じゃあマンションまで送るわ」
岡田が俺のマンションに向かって車を発進させた。
疲れた…
瞼を閉じると、すぐに睡魔が襲いかかりそうになるのを、目頭を押さえて必死に堪える。
「まだ時間かかりそうだから、少し寝たらどうだ?」
信号待ちで車を停めた岡田が、車窓に向かって顎をしゃくる。
渋滞、か…
これは暫くかかりそうだな…
「悪いな…」
「かまわんよ」
岡田がフッと笑うと、隣で一つ欠伸をした。
そうだ、
疲れてるのは俺だけじゃあない。
岡田だって俺のために…
岡田がいてくれるから、俺は前を向いていられる。
もしも岡田がいなかったら、今頃俺は…
いや、考えたくないな…
今はただ、岡田の与えてくれる束の間の安らぎに身を任せよう。
この先に続く、長い闘いに備えるために。
ゆっくりと流れる車窓に誘われるように、俺はそっと瞼を閉じた。
今だけ甘えさせて…