第10章 Testimony Ⅱ
「どうもすいませんねぇ。これから取引先との打ち合わせに出なきゃいけないもんで…」
電話を切った長瀬さんが、申し訳なさそうに俺達に向かって頭を下げた。
「いえ、こちらこそお忙しいのに押しかけてしまって申し訳ありませんでした」
岡田が頭を下げ、ボイスレコーダーの電源を落とした。
「こんな話で、参考になりましたかねぇ?」
「十分です。ご協力感謝します。侑李君もね?」
「僕は何も…。あの…」
まだ何か言い残したことがあるのか、侑李がその場で姿勢を正す。
「智兄ちゃんを助けて下さい。お願いします!」
額が膝に着くくらいに頭を深々と下げる侑李の背中を、長瀬さんがそっと撫でた。
長瀬さん、ひょっとして侑李のことを…?
「自分からもお願いします。コイツぁ、なんてゆうか息子みたいなもんでしてね?」
そう言って長瀬さんは照れ臭そうに笑った。
「侑李君、智君のことは俺が絶対に守るから。だから…」
安心して…
俺達は、再度の協力を得るかもしれないことを伝え、長瀬さんの工場を後にした。
駐車場までの道すがら、ふと足を止めた俺は、工場のある方へ振り返った。
そこにはいつまでも手を振る侑李の姿があった。
あの日、智君もこんな風に侑李と別れたんだろうか?
辺りは真夏のような日差しが照りつけていた。