第10章 Testimony Ⅱ
「あの…、いいですか?」
漸く絞り出した声は、酷く掠れていて、俺は一つ咳払いをしてから言葉を続けた。
「侑李君は少年院での面会以降、さと…大野さんとは会ってないんですか?」
俺が智君と過ごすのは週末だけ。
それ以外の時間を、智君がどう過ごしているのか、正直俺は知らない。
知りたい…
俺の知らない智君の時間を…
どうか教えて欲しい…
「会ってはいません。でも、一度だけ電話が…」
「いつ?」
「クリスマスのちょっと前…週末でした」
「なんて? 大野さんは君に…」
急いた気持ちが、口調を早くする。
「彼は君に…!」
身を乗り出した衝撃で、テーブルの上の湯のみが転がる。
ポタポタと零れるお茶が、俺の靴下を濡らしたが、そんなことすら気にならない。
ただ知りたい…その思いだけが俺の焦りに拍車をかける。
「智兄ちゃん言ってました。いつも貰うばかりだって…。自分からは言ったことないって…。だからちゃんと伝えるって…」
侑李の瞳から涙の滴が、一つ、また一つと落ちて行く。
「…なに…を…?」
「愛してる、って…。櫻井さん、あなたに伝えるんだって…」
「…いつから…?」
「初めから。名刺の名前を見て、ああ、この人なんだ…って」
侑李が泣き腫らした目を細め、俺に優しく微笑みかける。