第10章 Testimony Ⅱ
智君が施設からの斡旋で入った会社…喜多川建設は暴力団との癒着があったことは、事件後の調べで分かったことだ。
その関係はかなり密なものだったことも…
そこに、俺達がまだ知らない何かがあるのだろうか?
「あの…」
それまで俯いたままで、言葉を発することのなかった侑李の小さな声に、俺は我に返る。
「兄ちゃんが最後に面会に来た時、兄ちゃんが言ってたことがあるんです」
全ての視線が侑李に集まる。
「長瀬さんトコに行ったら、もう俺とは関わるな、って…。僕、どうして兄ちゃんがそんなこと言ったのか分からなくて…」
「あぁ、それなら俺も同じようなコト言われましたよ」
再び俯いてしまった侑李の隣で、長瀬さんが思い出したように言う。
「元受けとは手ぇ切った方がいいってね? 簡単なことじゃないんですけどね? うちみたいな、小さな町工場は元受けがなきゃ成り立ちませんから…」
「でも手を切ったんですよね?」
「えぇ、まぁ…。だってね、あん時の大野さん、あんまりにも必死な様子で…。コイツの為にも、手ぇ切ろうと…」
侑李のため…?
侑李を守るため…?
違うよな?
そうじゃない筈だ。
智君…
君は一体何を知っている?
君は一体何を…?