第10章 Testimony Ⅱ
「丁度その当時、ウチの元受けが大野さんの会社とは懇意にしてたようでしてね、たまたま下請けのウチに仕事が回って来たって、訳でして…。 で、その現場で会ったのが最初、だったかな…」
時折何かを思い出す様に首を捻りながら、長瀬さんがはっきりとした口調で言う。
「それから何度か会ううちに、大野さんの方からコイツの話を聞かされましてね? それで…」
またか…
俺は一体智君の何を知っている?
寧ろ知らないことの方が多いんじゃないのか?
「どうして彼の保護司を引き受ける気になったんですか?」
そこで漸く岡田が口を開いた。
「いやね、お恥ずかしい話なんですが、俺も施設上がりでして…。コイツのことは他人事とは思えなかったんです」
同情ではなく、共感したってことか…
長瀬さんの無骨な手が、侑李の肩を叩く。
「でもおかしいですよね? 大野さんは侑李君を、弟のように可愛がっていたんですよね?」
俺の目の前で侑李が小さく頷く。
「だったら普通は、自分の手元に置きたいと思う筈ですが…。どうしてご自身の会社の社長なりに相談しなかったんでしょう?」
「俺もね、そう言ったんですけどね? 何よりコイツもそれを望んでたみたいだしね? でも、”駄目だ””出来ない”の一点張りで…」
侑李を託せない、何か理由がそこにあったんだろうか…