第9章 Deja vu
事件後、侑李は警察によって保護され、家裁で審判を受けた後、少年院へと送致されることになった。
侑李に下された審判は”懲役3年”。
思いの外刑期が短くて済んだのは、身寄りのない侑李の生い立ちへの同情と、事件後次々と明るみになった施設長の悪事の数々が功を奏したからだ。
身体を売らされていたのは、侑李だけじゃなかった。
他にも男女を問わず、数人の子供たちが施設長の私腹を肥やすためだけに、身体を売らされていた。
侑李はそのことを知っていて、幼い弟は妹達を守るために施設長を…
俺はその事実にやり場のない怒りと、それと同時に湧き上がってくる”後悔の念”に、身体を震わせ、吐き気すら感じた。
どうして助けられなかった…
どうして侑李の心の声に気付いてやれなかった…
どうして!
どうして!
あの日俺は、背を向けるべきじゃなかったんだ。
あのまま侑李を施設に帰すべきじゃなかった。
侑李を連れて逃げることだって出来た筈なのに…
侑李、ごめん…
お前を守ってやれなくて、ごめん…
頼りない兄ちゃんで、ごめんな…
侑李への思いは、
日を追うごとに”後悔”となって俺の心に重くのしかかった。