第9章 Deja vu
一つのブランケットに侑李と包まり、朝を迎えた俺は、簡単な朝食を済ませ、侑李を連れて寮を出た。
会社には半休を貰った。
バイトだから、多少の融通は利く。
施設に侑李を送り届ける途中、地元の大型ショッピングセンターに立ち寄った。
そこで侑李に新しいTシャツを買った。
安月給だから、そんなに高価な物は買えなかったけど、それでも施設から与えられる、誰が着たかも分からない”おさがり”よりはうんとましだ。
「僕、大切にする」
施設の門の前まで侑李を送り届けた別れ際、侑李は俺が買ってやったTシャツの入った袋を、まるで宝物のように大事そうに胸に抱いて目を輝かせた。
「なぁ、侑李? お前は俺のたった一人の弟だ。だから…」
俺を見上げる侑李の瞳から涙が零れる。
「…うん。兄ちゃんがそう言ってくれただけで僕…」
「ほら、もう行け? 俺も仕事あるし…」
まだ何か言いたげな侑李の背中を押し、門の向こう側へ押しやると、施設の重い門扉を閉じた。
「兄ちゃん…智兄ちゃん…」
寂しそうに俺の名を呼ぶ声に後ろ髪を引かれながら、俺は手を振って応え、侑李に背中を向けた。
侑李は俺の姿が見えなくなるまで、門の向こうから手を振り続けた。
とても寂しそうな…今にも消えてしまいそうな悲しい笑みを浮かべて…