第9章 Deja vu
アイツ…侑李に初めて会ったのは、俺が児童養護施設に送られて暫くしてからのことだった。
周りの環境にも全く馴染めず、口は疎か、心まで閉ざしてしまった俺に、侑李の存在は明るい光をもたらしてくれた。
元々一人っ子で育った俺には、兄弟と呼べる存在はおらず、赤ん坊だった侑李を、本当の弟のように可愛がった。
侑李が泣けば抱いてあやし、オムツを替えてやったことだってある。
幼稚園や学校で侑李が虐められれば、虐めっ子達からヒーローの如く侑李を守ってやったりもした。
とにかく俺は、侑李が可愛くて仕方なかったんだ。
侑李もそんな俺を、本当の兄のよう慕い、懐いてきた。
“智兄ちゃん”
そう呼ばれることが、擽ったくもあり、喜びでもあった。
やがて俺が施設を対処する頃になると、侑李も一緒に施設を出ると言って聞かなかった。
俺だって出来る事ならそうしてやりたいと思った。
でも高校を卒業したばかりの、まだ子供だった俺にはどうすることも出来る筈もなく…
俺は泣いて縋る侑李を施設に残し、施設長から紹介された建築会社の寮へと入ることになった。
その後も暇を見つけては、侑李に会うために施設を訪れた。
心のどこかで、施設に残してきた侑李のことが気がかりだったから…