第9章 1人じゃない。
冷蔵庫を開けると、常備していたミネラルウォーターを取り出しグラスに注ぐ。
それを一気に飲み干すと今度はグラスに半分、ミネラルウォーターを注ぎ、今度はゆっくり飲み干した。
夢で追いかけてきていたもの。
それはきっと、自分の心の中のもやもや。
父と母が帰らなくなった頃
お手伝いさんがいなくなった時
受験の時
高校入学の時
そんなとき、いつも今日と同じ、または似たような夢を見ていた。
いつもは転んで逃げきれなくて、捕まってどうしようって考えた時に目覚める。
けれど今日は違った。
転ぶ、と身構えた時、リエーフの声がした気がしたの。
いつもの”美優さん”って私を呼ぶ声が。
それで目を覚ました。
本当に私、リエーフに助けられてばかりだな。
くすり、と笑うとぺたり、床が鳴り私は後ろから抱きしめられた。
「みゆさん…」
『リエーフ、起こしちゃった?』
寝ぼけた声で呼ばれた名前。
不安になり声をかければさらにぎゅっと抱きしめられる。
「トイレおきたらみゆさんいなくて…」
『喉乾いて水飲みに来ただけ。心配かけてごめんね?』
先にトイレには行っていたらしく後は帰るだけのリエーフの手を引きながら私は自室へと戻った。