
第32章 灰羽リエーフの数日〜2025.birthday〜

中華街でひとしきり食べ、お土産を買ったあとは移動して赤レンガ倉庫に。こちらもひとしきり中をみたあとは外のデッキに移動した。景色は綺麗だけど海辺だから風が寒い。
早まる夕日のオレンジを見ながらふるりと体を震わせれば、それに気づいたリエーフが背中からぎゅうと抱きついてくれる。
「風除けとハグ!」
私の顔を覗き込むリエーフの柔らかな笑顔に思わず目を細めると、すり、と頭をすりよせる。
『リエーフ、夜、ご飯どうしようか。』
キラキラと輝き始めた海を見ながら問いかけると、リエーフは端末を取り出し腕の中の私も見られるように前に掲げてくれる。
美味しそうなお店をスクロールしていけば、お刺身の美味しそうな立ち飲み屋さんを見つける。リエーフにそれを伝えば、そのままリエーフが予約をしてくれてそのお店に行くことが決定した。
道路沿いに2人でゆっくり歩けば、ビル群の一角にそのお店はあった。小さな割烹料理店でカウンターメインのそのお店は、座った席から店主の手元が見える素敵なお店。
お任せコースに追加し日本酒飲み放題をセットにすれば、小さな小鉢が数種類と熱燗が出てくる。
蓮根のきんぴらやきのこのあえものを口にすれば、出汁のきいた食材が歯触り良く口の中を通る。その食感を楽しみながら温かな日本酒を喉に流し込めば、染み入るようなおいしさについつい頬を緩ませてしまう。
それはリエーフも同じのようで、小鉢を楽しんだ次は鮮度の高いお造りに目を輝かせている。
炭火で焼いた秋刀魚も油が乗りながら身がホクホクでさすが旬だなと思わせるような味。揚げ物や煮物もしっかり味が染みていて、ついついお酒が進んでしまう。
「美優さん、ペース大丈夫?」
熱燗で温まり頬を緩めているのに気付いたらしく、手に持っているお猪口を離されると代わりに水のグラスが収まる。そのままゆっくりとグラスを傾ければ冷たい水が熱った体を冷やし、それすらも心地よいほどに酔っていると気づかされれた。
この数年でお酒の飲み方を学んだ。
間にお冷を挟んでゆっくり料理と味わえば、程よい酔いで抑えられるのをリエーフと飲みながら学んでからはずっとこの飲み方を続けている。
『ごちそうさまでした。』
料理もお酒も美味しくて大満足。ほろ酔いの気持ち良いタイミングでお会計をしお店を出れば、そのままゆっくりホテルへの道を歩き始めた。
