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ねこわん‼︎【HQ】

第32章 灰羽リエーフの数日〜2025.birthday〜



「美優さんごめんって。」

せっかくのリエーフの誕生日なのに私の気持ちは不貞腐れたまま。それもそのはず。1回だけと伝えたのに、守られたのは"リエーフの1回"の方。リエーフが1回イくまでの間私は何度もイかされホテルの朝食を食べそびれた。

「朝飯は明日も食えるじゃん。ほら、小籠包美味しいよ?」

差し出してくる小籠包は緑色。火傷をしないようにと少しだけ開かれた皮の隙間から溢れる肉汁も美味しそうで、口を開けば美味しさの塊が口内を満たした。
おいしい?そう聞かれても、口内は小籠包と肉汁でいっぱい。口元に手を添えながら何度も頷くとリエーフも同じものを口内へと放り込んだが、やっぱり熱かったようで少しぬるくなった暴々茶を口に運んでいた。

「うまいもんいっぱいで幸せっすね。」

再びお茶を呑みながら頬を緩めるリエーフにつられて頬を緩ませれば、リエーフの体に柔くもたれる。そして顔をあげると小首を傾げた。

『リエーフ、もう一つ。』

ふは、と吹き出すような声と共にリエーフの箸が動く。再び差し出された箸にはもう一つの小籠包。口の前に運ばれればひとくちでぱくり。口内で皮を破ると緩くなった肉汁がじゅわと溢れてくる。むぐむぐと咀嚼し飲み込むとまた体に柔くもたれる。

『幸せ』

美味しいものを食べるのも幸せ。
でもそれはリエーフと一緒だから。
すり、とすり寄れば腰に沿う手のひら。数時間前の情事を思い出しぴく、と肩を跳ねさせると、沿う手のひらに力が入った。

「美優さんあんまり可愛いことしないで。」

拗ねるように唇を尖らせながら引き寄せられた体は暖かくて、胸元に額を擦り寄らせてしまう。
昔に比べて外でも甘えることが増えた。年下だから、とか、頼りないから、とかではない。ただ私がいじっぱりで甘えることが苦手だった。それを時間をかけて解きほぐしてくれたリエーフの気持ちが嬉しくて、いつの間にか身を委ねてしまっている。
いつまでも待ちますと言ってくれたリエーフの気持ちに甘えっぱなしで中々結婚という形にできていないのが申し訳ない。それでもリエーフのことを離したくないから、私はきっと我儘なんだ。

「美優さん…?」

首を傾げたリエーフの方に少しだけ伸びて唇を奪う。呆けた顔に安心し切った笑みを向けると、大きな手のひらに指を絡めた。

『今回もいっぱい思い出つくろうね。』
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