第32章 灰羽リエーフの数日〜2025.birthday〜
某1人飲みに丁度良いと言われるチェーン店で遅めの夕飯を食べる。
リエーフはトマトソースとチーズのかかったハンバーグにラムの串焼き2皿、あとエスカルゴとプチフォッカチオを2皿注文。私は小エビのサラダのみ。もっと食べなきゃだめだと差し出されたハンバーグをそのままぱくりと口に放れば、じゅわりと肉汁が口内に広がる。トマトソースに負けない濃厚なチーズも美味しくていつもなら一口で遠慮するけれど2口目も行かせてもらった。エスカルゴも好きだけど、フォッカチオに残った旨みを吸わせて食べるのもまた美味。ラムを一本貰い食べた後残りのサラダを食べ終わらせればリエーフも同じタイミングで食べ終えた。
お腹が満たされたままリエーフと手を繋ぎお店を出ると、必要なものを買いにコンビニに寄りホテルに戻る。
先にお風呂を促されて先にシャワーを浴びながら、出かける直前のハグを思い出す。…いや、家を出る前からドキドキはしてたしなんなら期待はしていた。明日は食べ歩きの予定しか決めていない。他は行き当たりばったりの予定だから、明日の朝はゆっくりでもなんとかなる。下着は…可愛いのは買ってあるけれど、期待したって思われないようにナイトブラでもいいか。んん…髪の毛乾かさないと傷むから…明日の朝洗おうか…アラームちゃんと確認したかな。
シャワーを止め丁寧に体を拭き下着を纏う。パジャマ代わりにリエーフに借りた半袖のTシャツを着ると、そっとドアを開いた。
寝てる。
壁際のベッドにうつ伏せですやすやと寝息を立てているリエーフ。寝落ちる直前まで見ていたのか手元にはスマホ。0時を過ぎたようで、何通もの通知で光るロック画面には私と2人で撮った写真。
端末も一緒、カバーはあえての色違い。
パスワードも知っているその端末を回収し枕元の充電器に挿すと頬を指で突く。
『リエーフさーん、お風呂終わったよー。』
小さな声で呼びながら突いても珍しく起きない理由もわかっている。
帰宅時間を早めるために今日は珍しく早番。いつもはお店を閉めた後にやっている後輩指導を朝にこなし、昼は通常業務、そこからの運転じゃあ疲れちゃうよね。
そっと頭を撫でれば、その手に擦り寄り柔らかく笑うリエーフが愛おしい。目を細めながら私はリエーフの緩んだ頬に柔らかく口付けを落としたのだった。
