第31章 灰羽リエーフの数日 2023
電車を乗り換えると見えてくる高いビル群。
それらが少しずつ減っていき、一度海が見えた所で美優さんに問いかけてみる。
「行き先って横浜?」
ふるふると横に首を振る美優さんは楽しそう。
「もうちょっと先。あと30分まってて。」
30分…この先は、と考えてみれば一つの観光地が頭に浮かんだ。
「あ…鎌倉。」
「正解。」
しおり見て、と促されて鞄から取り出し旅のしおりを開けば地図とお店の概要、周辺のお寺などたくさんの情報が細かく書き込まれていた。
「これ…時間かかりましたよね。」
俺が問うと美優さんは小さな声で笑う。
「でもね、リエーフとどんなお店に行こうかなって考えてたら止まらなくて。」
楽しかったから、と笑う美優さん。
書き込んだしおりに何度も目を通すと、膝の上の美優さんの手を握る。
「これ、むちゃくちゃ嬉しいっす。美優さんのおすすめの店回れるだけ回っちゃいましょうね。」
少しびっくりした顔。
美優さんはその顔を笑みに変え頬を綻ばせた。