第30章 夏、避暑にて。
泊まるお部屋もやっぱり綺麗。
ベッドはツイン…ではあるのだけれど、クイーンサイズが2つ並んだもの。リエーフも身長を気にせず寝られるこのベッドもお気に入り。また窓から広がる景色に思わず窓際に駆け寄って堪能してしまう。
「浴衣も選んできて大丈夫みたいっすよ?行ってみます?」
クローゼットに荷物を置くリエーフにそう問われれば、少しだけ考える。
『だったら大浴場で汗流してきてもいい?今なら人も少ないだろうし、………浴衣着るならお風呂上がりの綺麗な時に見てもらいたいなって…』
「わかりました。じゃあ俺も汗流してきます。」
リエーフの了承を聞くと自分の荷物を開きトートバッグに着替えを入れる。残りの荷物をクローゼットに戻すとお風呂の準備をするリエーフの背中に抱きついた。
『……可愛くなってくるから、期待してて?』
「これ以上可愛くなっちゃうんですか?楽しみにしていますね?」
頬に唇を寄せると、唇に返される熱。行ってきます、と耳に吹き込むと、私はフロントのある1階へ。フロントの横にある浴衣を選び大浴場に向かうと、手早く髪と体を洗う。髪をお団子にまとめてゆっくりと浸かると、じわり、と体にお湯が染み渡る。深いため息を吐きながら肩まで浸かればそれだけでここにきてよかったと思わせる。
出会った頃に比べて増えたスキンケア。
可愛い、綺麗だとリエーフに思われ続けたくて自分なりの努力は続けている。
昔からのコンプレックスである身長の小ささと肉付きの良い胸とお尻。減らない分、維持するように筋トレを欠かさなくなったり、食事の量を管理してこれ以上肉付きが良くならないようにしてはいる。
程よく温まった体を湯船から引き上げると脱衣所に戻る。
大きな鏡の前、コンプレックスだらけの体をまじまじと見る。コンプレックスだと強く思う気持ちが薄れて行ったのは、リエーフのおかげ。
私の体をたくさん愛でてくれるから、嬉しさでいっぱいになるんだ。
しっかりタオルで水気を拭き取り下着を着ける。浴衣を着ることがわかっていたから、あまり浴衣に響かない、それでも可愛い下着を旅行のために購入した。そしてその下着の上から浴衣を着付けていく。本格的な着付けになれば、体型補正のタオルが必要だけど、今日は簡易的。旅行なのだからそのくらいは許してほしい。
ある程度の形に整え髪を乾かしたら、荷物を持ち大浴場を後にした。