第30章 夏、避暑にて。
パンケーキを食べた後は再び車に移動。お土産は帰りに改めて見ることにして、私たちは旅館へと移動した。
専用の駐車場に車を停める。少しだけ増えた荷物を持てば、横からそれを奪われる。その代わりにと伸びてきた大きな手に指を絡めると、そのまま2人で旅館へと足を踏み入れた。
入り口が開けば、受付の光の柔らかさに思わず立ち止まってしまう。リエーフも同じようで、繋がれた手が先ほどよりも強い力で握られる。と、腕を軽く引かれれば、そのままフロントへ移動。リエーフに受付をお願いしている際も奥にあるラウンジに目を奪われてしまう。いつの間にか手続きが終わったようで、リエーフは私を見て苦笑する。
「美優さん楽しそうっすね。珍しく落ち着きないじゃないっすか。」
『……悪い?』
くすくすと笑みをこぼすリエーフに恥ずかしさを感じ少しだけむくれたように返事を返せば、リエーフは柔らかく笑い私の腰を抱く。
「こんなに喜んでもらえて嬉しいなって。でもまずは部屋に荷物置きに行きましょう?」
『ん、うん。』
もらった鍵の番号を確かめると腰を抱くリエーフに寄り添いながらエレベーターに乗った。
リエーフは大人になった。
出会った時に比べたらものすごい速度で。
あの時からたいして変わらない私のことを追い越すように、素敵な男性になっている。
私の方が年上なのに、包み込むような優しさで私のことをたくさんたくさん甘やかす。
嬉しいようで、ちょっぴり怖い。
だからたまに
隣にいるのは私でいいのかなってほんの少しだけ不安になってしまうんだ。