第30章 夏、避暑にて。
盛り付けから綺麗なパンケーキの写真を撮るとフォークとナイフを握る。
ロイヤルミルクティー味のパンケーキはお皿に3枚。1枚を切り分けまずはそのまま一口。ふわふわの焼き加減とミルクティーの深い味わいに頬が緩んでいく。次はクリームをつけて一口。深いミルクティーの味は変わらないが、生クリームのおかげでさらにまろやかな味わいになっていて、切り分けた1枚目をすぐに完食してしまった。
次は期間限定品。厚みのある、さらにふわふわなパンケーキを切り分けると、添えられた桃のコンポート、アールグレイのジュレ、アイスクリームを乗せて口に運ぶ。甘いけれどくどくない。甘いシロップで丁寧に煮た桃はレモン果汁が入っているからか、口当たりがさっぱり。控えめな桃の味をアールグレイのジュレがさらに爽やかにしてくれる。そこにアイスクリームを追加すれば上品な甘さにまとまってふわふわなパンケーキにぴったり!
「美優さん幸せそう。」
口の中で変化を起こすパンケーキたちに気を取られていれば、こちらに向く声。顔を上げれば、パスタを食べ終えたリエーフが柔らかな瞳でこちらを見ている。
『ん、美味しい。』
切り分けていたパンケーキにコンポートやジュレ、アイスに生クリームを添えリエーフに差し出すと、一口には大きなそれを大きな口でぱくりと頬張る。口端に少しだけついたクリームをぺろ、と舐めとる仕草も、味わった際の美味しくて和らぐ目元も、昔から変わらなくて安心する。
「全部食べられそうっすか?」
『ん…全部は無理。夕飯入らなくなっちゃうし。』
「じゃあミルクティーの方少し食べちゃいますね。」
声と共に動くお皿。その上に乗る1枚を、美味しそうに食べていく姿を見ていれば、ふと目が合う。
「…美優さんお腹いっぱい?」
誤魔化すように首を横に振りパンケーキを口に頬張る。
今更見惚れていたなんて、言えない。
一緒に頼んだストレートティーを口に含むと、次は味わうようにゆっくりとパンケーキを口に運んだ。