第27章 灰羽リエーフの1日 2019
PM06:08
黒尾さんと飯食って時間を潰していればあっという間にこの時間。
お店に向かいスーツを着れば、さっき話を聞いてくれた店員さんがにこりと笑う。
「よくお似合いですよ、あとは…」
近くの椅子に座らされ目を瞑らされると相手の手が俺の髪を弄る。
擽ったいのと気になるのとでひくひく瞼をひくつかせていれば、聞き覚えのあるぶひゃひゃという笑い声。
「リエーフ緊張し過ぎだっての。」
「どうでしょう?」
「ああ、いいんじゃねえ?」
目を開けば笑いを堪える黒尾さんと、にこにこと笑顔を発する店員さん。
俺を差し置いて店員さんと黒尾さんが目の前で話をしていて俺は黙って話を聞いている。
「灰羽様、髪色が明るいのでスーツのこのお色がぴったりなんですよ。」
「シャツもスーツも暗い色だからネクタイのこの色がいい感じにポイントになってるんだよなぁ。」
「本当彼女さん、灰羽様が好きなんですね。」
「ベタ惚れ。聞きました?コイツら今喧嘩してるの。」
「聞きました。でもすぐに仲直りしますよ。」
「だよなぁ。」
「俺、話しても大丈夫っすか?」
話に割り込めば二人はくすくすと笑いどうぞどうぞと俺に話をさせてくる。
「黒尾さん、次はどこに行くんすか?」
笑いを収めた黒尾さん。
なぜか唇に指を当ててにやりと笑う。
「秘密。まあ、お前もわかる場所だから心配するな。」
そう言って笑った黒尾さんはほんっとうに悪い顔をしていた。