第27章 灰羽リエーフの1日 2019
10:12
「美優さん、リエーフ先輩てつろーさんと合流したみたいです。」
「わかった。じゃあ行こうか。」
少しだけ温くなったコーヒーを飲み干すとお会計をして外に出る。
莉奈ちゃんと2人、向かった先は…そう、自宅。
実は家に取りに行かなければいけないものがあって、リエーフと鉢合わせしないようにとクロに連絡してもらったのだ。
ちなみに連絡を待っていたのは自宅近くのよく行くカフェ。
いつもはリエーフと来るから鉢合わせしないか心配だったけれど、今日は大丈夫だったみたい。
まあ、駅前のバーガーショップが新作を出してたから行くならそっちかなとヤマを張ってたんだけれど。
「お邪魔しまーす。」
自分の家だがなんとなく小声になってしまうのはきっと忍んで来ているから。
念のために内側から鍵をかけるとまっすぐ自分の部屋へと向かう。
クローゼットを開ければ、莉奈ちゃんが目をキラキラ輝かせた。
「美優さん、また洋服増えました?」
「うん。欲しいのあったらいいよ?」
わぁい!と莉奈ちゃんははしゃいでクローゼットの中の洋服を見ている。
その横で私はクリーニングの袋に入ったワンピースを取り出した。
パーティ用のドレスを数着取り出すとベッドに並べ莉奈ちゃんを呼ぶ。
「どれがいいかな?」
並んだパーティドレスの中の1つ。
淡いピンク色のそれを持ち上げた莉奈ちゃん。
ネックレスが付属の袖の一部がレースになったAラインの膝丈ワンピース。
最近ではめっきり着なくなったから誰かに貰って欲しかったのよね。
「それ、莉奈ちゃんにあげる。」
ほかのドレスをしまいながら莉奈ちゃんにそういうと莉奈ちゃんはありがとうございます、とお礼を言う。
私も今日着る服を取り出せばそれらとアクセサリーと小物、パーティ用のパンプスを準備して自宅を出た。
ずっしりとした荷物を持ちエントランスから外に出ると、後ろからクラクション。
後ろを振り向けば運転席から身を乗り出す小柄な体。
「おーい、乗れよ。」
「やっくん!」
「やく先輩!」
「乗れよ。黒尾の家行くんだろ。」
多分クロが連絡してくれたんだろうけれど荷物が多い時に助かった。
そのままやっくんの車の助手席に乗り込めば、私達はその場を離れ避難先のクロたちの家へと向かったのだった。