第27章 灰羽リエーフの1日 2019
「俺、見ちゃったんです。今日夜久さんと歩いてましたよね?」
さ、と変わる美優さんの表情。
ふいと逸らされる顔に増幅する不安と強くなる肩を掴む手の力。
「ね、リエーフ痛い…」
「浮気っすか?心変わりっすか?俺より夜久さんの方がいいんすか?」
ぼろぼろと溢れる本音。
見開かれる瞳が相手の気持ちを物語る。
「っ!違っ!」
「じゃあスマホ見せてくださいよ。」
「それは…」
でき、ない、と呟く美優さんに何を言ったかは覚えていない。
気づけば美優さんの目が涙に濡れていて、美優さんはこの家から出て行った。
どうすればいい。
どうしたら美優さんが戻ってくる。
まずはしっかり食事を摂る。
冷蔵庫の中にあった卵と冷凍したほうれん草でスクランブルエッグ、ついでにウインナーも焼けば立派な朝食だ。
昨日の残りの白米と味噌汁を準備して大きめの一口を頬張る。
しっかり噛んで飲み込んで次の一口。
茶碗が空になる頃には冷えた体も少しずつ熱を持ってくる。
聞いてもらう相手のいないご馳走さまをして食器を洗う。
さて着替えるかと思った矢先、スマホがメロディを奏でた。