第27章 灰羽リエーフの1日 2019
23:23
「お風呂、ありがと。莉奈ちゃん。」
今日はリビングのソファを借りるつもりでいたのに、ソファにはクロの枕と毛布。
「みゆさんはこっちです。一緒に寝ましょう?」
てつろーさんおやすみーと私を部屋に連れ込む莉奈ちゃん。
まって、と抵抗すれば、部屋に入るなりぎゅううと莉奈ちゃんが私を抱きしめる。
「みゆさん、今日は1人になっちゃダメ。余計なこときっと考えちゃうから。」
ほろり、ほろりと溢れた涙。
我慢していたものが溢れ出して嗚咽に変わる。
「わ、たし、こんなっ、け、んかっ…はじめてで…」
優しげな手のひら返し私の背中をさする。
「けんかっ、怖くて…離れていきそ、で…」
莉奈ちゃんにしがみついてぽろぽろと本音を呟けば、莉奈ちゃんは大丈夫と声をかけてくれて、私はそのまま眠りに落ちてしまった。
ーーーーーー
寝室の扉が開く音がして体を起こせば莉奈が俺の隣に座る。
「みゆさん眠った。みゆさんがこんなに感情口にするのはじめて。」
「あー…美優ん家、家族事情が複雑なんだ。まあ、俺も詳しく話は聞いてないけど。まあ父母どちらも金で色々解決するような親だったみたいなのは聞いたことはある。」
入学当初は表情さえなかったからな。
はあ、と息を吐けば莉奈が俺の肩に頭を置く。
「あのお家見ればわかります。リエーフ先輩と付き合うまであの広いお家に1人でしょ?私だったら、辛い。」
「あいつは我慢しすぎなんだよ。まあ、今はリエーフがいるからな。」
莉奈の肩に手を伸ばし抱いてやると小さく、ねえと問う声。
「いいんですよね、これで。」
「美優がそのままでいいって言ってるからな。」
ああ。
計画は実行する。
「明日は忙しくなるからな。そろそろ寝るぞ?」
「ん、わかりました。」
おやすみなさいの声と重なる唇。
美優がいるからこれ以上は我慢。
莉奈が寝室の扉を閉じたのを見て俺はリビングの電気を消した。