第24章 酔っ払いにはご用心。
side美優
立ち上がろうとすれば、ねえ、と両横から声。
いつのまにか私の横に張り付いた二人が私を立たせてくれない。
「…なに?」
「他にも何かあるんデショ?」
「別に何もないんだったらいいんです。」
長身男子にがっつり挟まれる私。
私はサンドイッチの具じゃない。
「なにも、ないよ。」
「本当に?」
早く抜け出てお蕎麦作りたいのに。
全く抜け出せそうにない。
それどころかワンピースのスリットから手を入れてくる始末。
「本当、に?」
右からそう言われたと同時、つつっとタイツに包まれたふくらはぎを指がなぞる。
そのまま膝裏、膝、そして腿。
「ね、赤葦…クロに……怒られる、から…」
「じゃあこのまま遊ばれててくださいね?」
今度は左。
ちい、と聞こえたファスナーが下がる音。
体にフィットしたハイネックのニット越しに、背中をなぞる指。
「っ!」
「あかーしさん、ツッキー。」
いつのまにかダンスナンバーは終わり、女の子の説明書のような曲が流れている。
そしてリエーフがイラついた気持ちを隠すことなくこちらに向いている。
「さすがにやりすぎっす。」
「だって美優さん教えてくれないから。」
「だからって!」
「リエーフ、キッチン、行ってて?」
静かにリエーフを呼ぶと、リエーフは口を紡ぎ立ち上がると、しゅんとした顔でリビングを出る。
「さて。赤葦、蛍。」
2人に向き合うと、私は2人に言い放つ。
「悪ノリし過ぎよ、2人。
ちなみにこんな悪ノリしてこのまま普通に過ごせると思ってる?」
きょとん、とした顔の後、さあっと顔色が青くなる2人。
「ふたりとも、帰りのお土産あげないから。」
お土産。
年始くらい好きなもの食べたいよね、と予告をして作っていた好きな食べ物の詰め合わせ。
ちなみに赤葦には定番の菜の花の辛子和えとその他常備菜。
蛍にはショートケーキとやっぱり常備菜。
やっぱり食べ物は強い。
2人は早々に私に白旗を上げ、ごめんなさいと謝った。
さて、あっちの2人は大丈夫かな。
両親の部屋に去って行った2人の心配をしながらも、私はキッチンに向かわせたリエーフの様子を見に行くために急いでその場を後にしたのだった。