第24章 酔っ払いにはご用心。
side莉奈
「なぁーにやってんのかな?ツッキー?」
頭上から降ってくる声。
パッと頭を上げればいつのまにか戻ってきたてつろーさん。
表情は笑っているけれど目が笑ってない。
「頭撫でただけですけど?黒尾さんも美優さんにやってますよね、これくらい。」
「賢いツッキーだったらわかるよな?俺が言いたいこと。」
「何ですか?」
そう言いつつもけーさんは私の頭を優しく撫で、私の髪の毛を指に巻きつけて遊び始めた。
「莉奈、離せって言ってんだよ。」
低い、地を這うような声とけーさんが手を離すタイミングはほぼ一緒。
けーさんを見れば"降参"のポーズで笑っている。
「黒尾さん、顔怖いですよ。」
「顔はもともとだ。次なんかしたら、黒尾さん本当におこなんだからな。」
最後の方は冗談めいたような口調で、黒尾さんはリビングから出て行った。
「はい、どうぞ。」
「…へ?」
差し出されたのはけーさん秘蔵の苺の缶チューハイ。
受け取れないと押し返そうとすれば、けーさんがくくっと笑う。
「ここまで露骨に怒る黒尾さん初めてだよ。」
「チューハイはなんでですか。」
「黒尾さんをもっと怒らせたいなと。」
「けーさん。」
「それに知りたいんデショ?飲んだ後の自分。」
てつろーさんを怒らせたくない。
でも、飲んだ後、自分がどうなってしまうかも知りたい。
悩んで悩んで悩んだ末に、私はチューハイのプルタブを開けた。