第21章 灰羽リエーフの1日 2018
19:55
コース料理も終わり、残るはデザート。
歩きできたから少しだけワインも飲んで、いい気分。
からからと運ばれてくる料理。
デザートはなんだろうな。
季節のフルーツを思い浮かべていれば、俺たちの横でカートが止まった。
「お待たせいたしました。
本日のデザートでございます。」
女の人がケーキをサーブしてくれる。
あれ?
最後って季節のケーキじゃなかったっけ。
ふわふわのパウンド生地に飾り付けされた生クリーム。
そしてチョコレートで描かれたhappy birthday leb の文字。
「本日のデザートは椎名シェフ特製、ブランデーケーキでございます。
10日間寝かせたこちらのケーキは格別ですよ。
お誕生日おめでとうございます。」
これ、美優さんが?
目の前の美優さんを見れば真っ赤な顔でこちらの様子を伺っている。
『今年は…忙しいから毎年やってたみたいに夕飯作らなくていい、家でゆっくりして食べに行こうって言ってたじゃない?
でも何かしたくて…
だから…』
「椎名ちゃん、予約入れた日に早速料理長に頼んで美味しいケーキの作り方教えてもらってたんですよ?
早上がりの日は必ず練習して帰ってたし。
昨日なんか今日の料理の仕込みまでして帰ったんだから。
完全に残業よね?」
『フロア長!!』
真っ赤な顔で困ったような顔で抗議する美優さんも可愛いけれど、それ以上に美優さんが作ってくれたケーキが食べたくて俺はフォークを手に取った。
「美優さん、食べていい?」
『リエーフのために、作ったんだよ?』
いただきます、と手を合わせてからケーキを一口切り分けて口に運ぶ。
濃厚なブランデーが口いっぱいに広がっていく。
生クリームをつけて食べると甘さが際立ってまた別の美味しさが広がっていく。
「美優さん、ありがとう。」
そっとフォークを置き言葉を伝えると、美優さんが笑った。