第16章 2人(?)ドタバタクリスマス!後編!
side灰羽
あそこってどう行くんだっけ。
館内の人混みを掻き分けながらエレベーターへと向かう。
まだまだ時間はある。
わかっているけれど焦る気持ちが足を早める。
電話の声のバックに聞こえた”水”の音。
小さな子供の”ペンギン”の声。
”高校生のお前に見つけられるかな”という忠告。
これだけのヒントがあってわからないほど、俺は馬鹿じゃない。
そう、行き先は水族館。
最近できた空飛ぶペンギンの水槽がものすごく人気だってニュースで言ってた。
それに此処の水族館の入り口は確か水が流れていたはず。
最初は広場にある噴水かなと思ったけれど、最後の言葉でこちらにピントを絞った。
エレベーターに乗ろうとすると、丁度何かのツアー客と被ってエレベーターが塞がれる。
エレベーターに乗りたい
ざわざわと前を遮る客達に苛立ちを覚え、ついでてしまった舌打ち。
それでもなかなか捌けない人混み。
エレベーターに乗れたのは、電話を終えてから30分も経った頃だった。
入り口でチケットを購入し、中に入る。
まあ、センセイみたいに稼いでるわけではないから”高校生のお前に”なんだろうけれど、さすがに水族館に入るためのチケット代もない、なんて思われてるんだろうか。
そうだったら本当に腹立たしい。
どれだけ馬鹿にされているのだろうか。
「くそっ…」
苦々しく吐き出すと俺は、きらきらと輝く水槽を横目に歩き出した。