第14章 2人(?)ドタバタクリスマス!前編!
お昼、午前の練習を終えた音駒、梟谷のメンバーが食堂へ集結する。
サラダは盛り付け済み。
スープは各自盛ってもらうように器と一緒に並べておく。
牛丼と親子丼を選んでもらい、私がささっと盛り付けて渡す。
私1人だから時間がかかることは猫又監督から伝えてもらっている。
だからといってあまり時間をかけたくないのが本音。
だって合宿中の貴重な休憩を減らしてあげたくないもんなぁ。
「すいません、親子丼大盛り1つお願いします。」
お腹の空いた部員達を裁き切り一息付いていれば、聞き覚えのある声。
顔をあげれば、梟谷のジャージをまとった赤葦がいた。
『赤葦、親子丼半熟がいい?それとも完熟?』
私の声を聞いた赤葦。
びっくりした顔をしたかと思ったらじっと私の顔を見る。
「美優…さん?」
『そうだよ?びっくりした?で、どっちがいい?』
「半熟で…」
一人分の具材を親子丼用の鍋に入れ、溶き卵を流し入れ、卵が固まるのを見て入れば赤葦が私に話しかける。
「何で今回…」
『猫又監督に頼まれちゃって。合宿終わるまでよろしくね?
あ、3時のおやつ楽しみにしてて?』
「これ…灰羽は?」
『知ってるよー?はいどうぞ?』
やわり、と固まった親子丼を大盛りご飯に乗せて渡すと、丼に添えた手に赤葦の手がするりと乗った。
「知ってるんですか…残念…」
つ、と手の甲を指でなぞりながら、赤葦の手が離れていく。
くすぐったさの中に、ぞくり、という感覚を感じてしまったのは、
きっと、私の、気のせいなんだ。