第14章 2人(?)ドタバタクリスマス!前編!
下拵えもあらかた終わり、後片付けも終了。
部活終わりのリエーフと合流し、じゃあ帰ろうかと帰り支度をしていた時、ガラリと調理室の扉が開いた。
「おい美優、そろそろ鍵閉めてーんだけど…っと。」
生徒が残っていないか最終確認に来たらしいマサちゃん。
リエーフがいることに気づき口を紡ぐ。
そんなマサちゃんにリエーフは笑顔で近づく。
「いいんですか?山岡センセ。元生徒を名前呼びなんて…勘違いされちゃいますよ?」
うわ…リエーフ。
ゴールデンウイークのことまだ気にしてるのね…
ため息をつきつつリエーフを止めようとすると、マサちゃんが鼻で笑った。
「ガキにんな心配されてもな…別に元生徒でも関係ねーだろ。美優卒業してんだから。」
「へー。10歳も年下の女の人追っかけるとかダサいっすね、センセ。」
「親が外国に行くからって彼女保護者がわりにするガキよりはマシだ。」
あの…
早く帰りたいです。
2人の笑顔が怖いです。
口元は笑顔なのに目が全く笑ってない2人の笑顔が。
『明日も早いから帰ろ…』
ぽそり、遠慮がちに呟いた直後、ぐいと引き寄せられる体。
あ、と声を出す間も無く私は誰かの胸の中。
「この人、俺のなんで。
誰にも渡しませんから。」
お揃いの洗剤が香る。
そして、お揃いのフレグランスが。
目の前のセーターに頬をすり寄せると、背中からククッと笑い声。
「本当、お前ら変わんねーな。今日は特別家まで送っていってやるよ。荷物もあるしな。」
そういってマサちゃんが指差したのは、私が昼間マサちゃんと買い出しに出かけた時に自分の家用に購入した食材達。
かさばる乾麺や、安かった調味料をダンボール1箱分買っちゃって…
今日と合宿が終わる日に分けて持ち帰ろうと思ったんだけど…
『さすがに…いいよ、マサちゃん。』
「飯、奢るぞ?玄関で待ってろ。灰羽もな。」
「ういっす。」
ご飯につられたリエーフが返事をしたおかげで、マサちゃんのお世話になることが決定。
マサちゃんはまだ見ていない教室を確認してくるとのことで先に調理室から出ていった。
「じゃあ行きましょうか?」
そういってダンボールを持ち先に行くリエーフの背中を、私は久しぶりの内ばきで床を鳴らしながら追いかけた。