第14章 2人(?)ドタバタクリスマス!前編!
あらかた買い物を終え、大量発注したお店へ向かっている間、話題になったのはやっぱり専門学校での生活のことで。
「じゃあやっぱり和洋中、全部のマナーやらされてるのか。」
『期末テストなんか調理実習と並行してマナーのテストやらされたの。
クラスのメンバー半々に分けられて、片方は調理実習、もう片方は調理実習のグループが作った料理でマナーテスト。
ペーパーテスト以上に緊張したよ…』
はあ…とため息をつきながらそう言うと、タイミングよく車が止まる。
前を見れば赤く光る信号が見えた。
「じゃあまた、俺が飯にでも連れて行ってやろうか?」
え、とマサちゃんの方を向けばマサちゃんはくすりと笑う。
「”お礼”は先払いだけどな。」
マサちゃんの左手がするりと顔の輪郭をなぞる。
その手が私の顎をくいと上げ、グロスののった唇に触れる。
『マサちゃ…』
「正嗣さん、だろ?」
ふわりと香るタバコとバニラの香り。
呼び起こされる数ヶ月前のデートの記憶。
(あいつは音駒のわんこ系少年 そのにっ!第10章)
抱きしめられたカラダの熱と、触れた唇の感触を思い出してしまい顔に熱が集まる。
『まさ…つぐ…さ』
「ん、よくできました。」
唇に触れる親指が私のグロスをぬぐいながら離れていく。
そしてその親指はマサちゃんの唇をなぞり、マサちゃんの唇を色付ける。
間接的な口づけ。
マサちゃんの温もりに触れてしまいたくなる。
『まさつぐ…さ』
不意に聞こえたクラクション。
とっくに信号が変わっていたみたいで、後ろに付いた車が早くしろと私達を急かす。
「…わり。」
謝る声と同時に発信する車。
その謝罪は、変わった信号に気づかなかったから?
それとも…?
静かになった車内では、マサちゃんが好きな洋楽の曲が流れていた。