第14章 2人(?)ドタバタクリスマス!前編!
そして合宿前日。
私は音駒高校の門をくぐっていた。
流石の私でも下拵えなしで男子高校生何十人+顧問×4食+デザートは厳しいので、それを猫又監督に伝えれば…
「じゃあ前の日に調理室開けるように先生方に伝えておくよ。ついでに買い出しにも行けるように1人先生も手配しておくかの。」
と、猫又監督の軽ーいお言葉。
電話を切った後バレー部のために車を出してくれる先生にお礼しなきゃな…と私はため息をついた。
音駒高校の職員室の扉を開けば、終業式は終わっていたらしくホームルームに出ていなかった、私が在学中に居た先生方に久しぶりと声を掛けられる。
まあ、私…いろんな意味で有名人だったので…
『あの…猫又監督に頼まれてる先生って…』
そう、周りの先生に聞くと、先生方の「あ」の声と共に上からズシリと重みが加わる。
重い、重すぎる…
「おう、俺だわ。」
声だけでわかる。
だって3年間ずっと一緒にいてくれたから。
『ねえ…マサちゃん、重いんだけど。』
「体重かけてるからな。」
『っ!重いっ!』
乗せられた手をぐいと持ち上げ振り返れば、マサちゃんがふはっと笑う。
「本当に変わんねーなー。」
大きな手がわしゃわしゃと私の頭を撫でた。
大好きだった大きな優しい手。
照れくさくなってやめて、と伝えたけれど…
本当は久しぶりに会えたことが嬉しくて、照れ隠しにふい、とそっぽを向いた。
「さて、どこに買い物行くんだ?」
自分の席から車の鍵を取り私のところに戻って来ると、マサちゃんは茶封筒を私の手にぽんと渡す。
茶封筒には”シイナ ミユ ”の名前と封筒内の金額。
そして、先に発注をお願いしていた食材の納品書とお店への地図。
歩きながらマサちゃんは「猫又監督から」と封筒と納品書を渡した主の名を告げる。
私は少し考えた後、近所の業務スーパーや野菜の安いスーパーの名前を伝えた。
「じゃあ、業務スーパーから回るか。ほら、行くぞ。」
さっさと職員室を出て廊下を進み始めたマサちゃん。
私は茶封筒をカバンの中にしまうと急いでその背中を追った。