第5章 十四松にファンファーレを
十四松視点
次の日…
女「十四松様ー!がんばってー!!!」
僕は今、河川敷の野球場でバットを構え、ピッチャーを睨みつけている。
観客は老若男女に加え、僕の子猫ちゃん達によるチアガール、そして…
〜♪
輝かしい音色のトランペット。
彼女の音色が聴こえてくると、昨日のことを思い返した。
・・・
昨日、彼女は同級生とデートではなく、とても大切な日だったようだ。
それは、オーケストラ入団オーデション。
本人は、後で僕に教えるつもりだったらしい。
僕の不安は杞憂に終わったが、同時に、夢のためにひたむきに努力している彼女に対し、勝手な想像をしていたことを恥ずかしく思った。
そして昨日、彼女からこんな誘いを受ける。
主「この間会った高校の同級生がね、草野球チームに入ってるんだって。それでね、明日河川敷で練習試合をやるらしいんだけど…十四松くん、助っ人で出てみない?」
願っても無い言葉だった。
・・・
十(よし、集中しろ十四松っ!)
ジリジリと照りつける太陽が眩しい。汗が噴き出る額を袖で拭う。
十(そうか…もう太陽があんな位置に。僕の魔法はもうすぐ解けてしまう!)
その前に、どうしても彼女に伝えたい事があった。
僕は、構えていたバットを右手に持ち、彼女の方向に突き出した。
トランペットの音色が消えると、観客の声援もピタリと止まる。
十「you主!!僕は…!」
深呼吸をして、叫んだ。
十「僕はキミを、愛している!!ホームランを打てたら、僕と正式な恋人になって欲しい!!」
女「イヤーーーーッ!!!!」
僕の告白を聞くや否や、チアガール達が次々に倒れて行く。
返事を待つと——彼女は、動揺しながらも小さく頷いた。
池「ちょっとちょっと!公開告白とか、何やってるんすか!?あんた助っ人で来たんだろ!?試合に集中してください!」
一塁にいる池面田くんに注意される。
十「ハハッ、ゴメンゴメン!でも見てて!ちゃんと結果出すからさ!」
僕がウインクをすると、池面田くんの頬が赤らむ。
十「さあ来いっ!!」
目線を再びピッチャーに向け、全神経を集中させた。