第5章 十四松にファンファーレを
主人公視点
今日はオーケストラ入団オーディションの日。
オーディション会場に向かうべく、駅のホームで電車を待っている。当然、バイトはお休みだ。
昨日はバイト後河川敷には行かずスタジオを借りて練習をした。
室内と外では楽器の響きが違うので、最終調整のためだったのだけれど、
主(十四松くんに伝えておけばよかったな…。)
もし、いつもの場所で待っていたならば…なんて考えるのは自惚れているだろうか。
川を飛び越える大ジャンプだけでなく、変身したり、空を飛んだり…。
一体彼は何者なのだろう。
超能力者?はたまた宇宙人!?
事実は小説よりも奇なり。
真相は神のみぞ知る…。
主(…っといけない。オーディション前なんだから、今は曲のイメトレでもしよっ!)
課題曲を聞こうとイヤホンを取り出した時、ホームにアナウンスが流れた。
〜お客様に、お知らせを申し上げます。◯時×分に赤塚駅〜〇〇駅間で人身事故が発生しました。運転再開の目処は立っておりません。状況が確認出来次第お知らせ致します〜
ホームがどよめく。
主(そんな…もし遅刻したら…!)
早足で駅から出てタクシー乗り場に向かう。
けれど、乗り場は既に長蛇の列が出来ていた。
・・・
・・・
時間が刻一刻と過ぎていく。
待てども中々列が進むことは無く…。
主(間に合わなかったら、どうしよう…)
タクシーは出回っていて全然戻ってこない。
ソワソワしながら並んでいると、商店街の方から女性の黄色い声が聞こえてきた。
主(何だろう?芸能人でもいたのかな?)
眼を凝らすと、人混みの中でもよく目立つ、金髪で高身長なあの人が群衆の中心に見える。
そう、それは…
主「十四松くん!?」
思わず叫ぶと、みんなの視線がわたしに集まった。
十四松くんはわたしに気づくと、笑顔で手を振りこちらに歩いてくる。