第5章 十四松にファンファーレを
主「わぁ……夢みたい!空を飛んでる!!」
主ちゃんは、瞳を夕焼け色に輝かせて、感嘆の声を漏らした。
十「喜んでくれてよかった!家はどの辺なの?」
主「あっちだけど、もう少しこのまま飛んでいたい…かも」
十「オフコース!地平線の彼方まで行こう!」
飛ぶスピードを速めると、しがみつく手に力が込められる。
愛しくなりおでこにキスを落とすと、主ちゃんがウットリとした表情になった。
十「ハハッ!そんな無防備な顔をすると、キミのことを食べちゃいたくなるよ」
主「えっ…そんな…!!」
主ちゃんは頬を赤らめながら、真っ直ぐな瞳で僕を見つめる。
主「ねえ…あなたは、本当に十四松くんだったんだね」
十「そうだよ。今さらどうしたの?」
主「だって、こんな人間離れしたこと、十四松くんにしか出来ないもん」
十「そうかな?でも信じてくれてよかった」
お互いの瞳に映る自分達を見つめ合う。
十「ねぇ、明日も明後日もデートしよう!ステキなところへ沢山連れて行ってあげる!」
主「ごめん、明後日大切な予定があるんだ。だから、明日もちょっと難しいかな…」
十「予定って?」
主「ふふっ、まだ内緒!」
十「そ、そうなんだ」
主「明々後日は休みだけど…」
十(予定って何だろう?まさか、この間の同級生と…)
十「……」
主「十四松くん、どうしたの?」
名前を呼ばれ我に帰る。
十「な、何でもないっ!少し考え事をしてただけだよ。さぁ、遅くなる前に帰ろうか?」
主「うん。あの教会の向こうにあるのがわたしのアパート!」
十「オーケー!」
ぐるりと迂回し、主ちゃんを家まで送り届けた。
胸の奥に湧き上がる不安は、拭い去ることが出来ずじまいだった。