第5章 十四松にファンファーレを
主「は、離してください!」
顎から手を払い、甘い呪縛から解放される。
主「変な冗談言わないで!あなたは十四松くんじゃない!どうしてわたしの名前を知ってるの?」
十「嘘じゃない!君を想ってこんな姿に変身したのさ!」
妄言にしか聞こえないけれど、警察に突き出す前に確認はすることにした。
主「…初めて2人で演奏した曲は?」
十「フフッ…野球応援のアフリカンシンフォニー…」
主「演奏した後、十四松くんがわたしにくれたのは?」
十「へーいお茶500ミリペットボトル」
主「最後に会った日、わたしたちは何をしていた?」
十「雲ひとつない青空を眺めて草むらに寝転んでいた。途中、あまりにも心地良くて僕が昼寝しちゃったんだ。目が覚めるとそこには、高校の同級生と親しげに話す主がいた。…僕は、邪魔しちゃいけないと思い、黙ってその場から離れた」
主「………本当に…十四松くんなの…!?」
十「うん。僕、嘘はつかないよ?」
にわかには信じられなかった。
けれど、最後の問いに対する答えは…どうしても嘘だとは思えなくて。
今日、一緒にいたいと言う彼の言葉を受け入れることにした。
・・・
・・・
〜♪
〜〜♪
十「ハァーッ!!セイッ!」
ドンドコドコドコドンドコドコドコ…
練習するわたしの横で、威勢のいい声と共に激しい和太鼓が聞こえてくる。
主「あのー…何で和太鼓?素振りじゃないの?」
十「2人で遊ぶのは、いつもキミの練習が終わった後だからね!その間、僕も演奏したくなったってわけさ!」
主「そ、そう…」
十四松くんだと言い張るその人は、フンドシを風になびかせながら華麗にバチを太鼓に打ち付けている。
主(ものすんごく見た目も会話もカッコよくなってるけれど、フンドシに和太鼓って…。まだ信じられないけれど、この予測不能な感じは十四松くん特有な気がする…)
はたから見たら変人2人組だろうな、と思いながらも練習を続けるのだった…。