第5章 十四松にファンファーレを
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残業を終え、ようやく河川敷に着いた頃には夕方になっていた。
主(ヒドイ目に遭った…!もうっ!)
謎のイケメンが帰った後、お店は大混乱。
卒倒した取り巻き達を起こし追い出してから、ぐじゃぐじゃにされた商品を陳列仕直し、鼻血まみれの床を掃除したりと、それはもう悲惨な状況だった。
残業を余儀無くされたわたしは、寝不足も相まってヘトヘトである。
それでも、河川敷に来たのは、どうしても練習したかったから。
今度の休みの日、オーケストラの団員オーディションを控えているのだ。
十四松くんに言われたことを意識してから、楽しく吹きたい、演奏する曲の良さを伝えたいと思うようになっていた。
そのおかげで、ただダラダラ吹いていただけの練習が見違えるほど楽しくなり、自然と苦じゃなくなって…。
そんなわけで、今回のオーディションは手ごたえを感じる演奏が出来るのでは?と密かに自信がついてきている。
主(それに…十四松くんに会えるかもだしねっ!)
淡い期待を胸に抱き、いつもの場所に行く。
だけど、わたしを待っていたのは…
?「ハーイ!おつかれさま!」
さっきのお騒がせイケメンだった。
しかもなぜか、フンドシ一丁で和太鼓を叩いている。
主「なんでここにあなたが!?」
?「なんでって…ここでいつも会ってたじゃないか?」
主「は?何言ってるんですか!あなたと会ったことなんて!」
?「まだ分からない?」
不意に顎をクイっと掴まれる。
主「い、いきなり何を!」
顔がゆっくりと近づいてくる。だけど、動揺し身体が動かない。
?「十四松だよ。主」
耳元で甘い吐息と共に名前が紡がれた。