第5章 十四松にファンファーレを
僕に残された時間は3日しかない。はやる気持ちを抑えきれず、主ちゃんに会いに行くことにした。
まだ午前中なので、彼女はきっとバイトだろう。
彼女が働いているコンビニを目指し、商店街を歩いていると、誰もがみな振り返った。
十(やれやれ…少々目立ちすぎかな?)
中には、僕を見て鼻血を出しながら倒れてしまう女の子もいた。
?「おい、ちょっと、こっちこい…」
不意に、後ろから聞き覚えのある声に呼び止められ、腕を掴まれる。
十「一松兄さん…?」
兄さんに腕を引かれ、僕は人気の無い路地に連れて行かれた。
一「お前…何してんの?」
十「何って、歩いていただけだよ?」
一「いやそうじゃない。…なにF6になって歩いてんの?それ維持すんの、かなりシンドイだろ」
十「平気さ。デカパン博士にもらった薬のおかげなんだ」
笑顔を向けると、一松兄さんはパッと目線を外した。
一(な、何ドキドキしてんのおれ!?相手は十四松だぞ…!)
十「どうしたの?」
一「状況はわかった。つーか、軽く街が混乱起こしてるから、とりあえず戻ったら?異世界召喚物みたいだし」
十「いや、それは出来ないんだ。薬の作用だから、自分ではコントロール不能で…。それに、この姿のうちにやりたいことがあるんだ」
一「…何?」
十「…好きな子とデートして、告白したい。上手くいけば、ゆくゆくはセクロスも!」
一「なっ…!お前、いつの間に!ってか正気か!?薬の効果が無くなったらどーすんの?」
十「そ…それはまだ分からない…。けれど兄さん、僕は行くよ!あの子を誰にも渡したくないんだ!」
一松兄さんの手を振りはらい、僕は歩き出す。
十(自分だって、無茶をしているのは分かってる。でも…あの子を…他のヤツに取られるくらいなら…!)
嫉妬っていうのかな?こういうの。
胸が締め付けられる初めての感情に、正直かなり戸惑っていた。
一松兄さんに別れを告げ、コンビニに向かう。
・・・
一「ケッ、上手くいくわけねー。結局は元の姿に戻って、ハイッおしまい…」
毒づいた後、一松はうつむく。
一「…大丈夫かな…」
結局は弟を心配している四男なのだった。