第4章 ひとりぼっちヒーロー 一松
一松くんを追いかけて路地裏までやってきた。
昼間でも薄暗く、少し薄気味悪い。
主(どうして、こんな所に…?)
左右を見て回るが、一松くんは見つからない。
室外機の音に気を取られていると、足にダンボールがぶつかった。
ぶつかると同時に、何かが箱から飛び出す。
主「っ!!」
小さな影がわたしの足の間をすり抜けて行った。
主(び、びっくりした。鼠かな!?)
後ずさりをすると、背中にまたしても何かが当たる。
主「キャッ!!」
驚き振り返ると、そこにいたのは子猫をだっこした一松くんだった。
一「……」
主「一松くんっ!ご、ごめんなさい!わたし、見かけたから、その、話しかけようと思って追いかけて…!」
一「…そこ、どいて」
主「え?」
言われるがまま横にずれると、だっこされた子猫がダンボールに入れられる。
ダンボールの中には、食べかけのキャットフードと少しこぼれてしまった水が置いてあった。
主「あ…さっき、この子のお家蹴っちゃったんだ…。ごめんなさい…!」
一「…べつに」
主「もしかして、野良猫にエサをあげてたの?」
一「……アンタには関係ない」
主(否定しないということは、そうなんだ…)
主「じゃあ、うちで買ってたエサって野良猫のために…」
一「…物好きだね…。こんな所にまでついてくるなんて…」
主「え?」
一「こんなゴミのあとつけてくるとか、ほんと、変わってるよね…。ご苦労様…」
主「なっ…なにそれっ!!」
頬がカァッと熱くなる。
一「正直、あんまり関わらない方が身のためだよ…。おれみたいなクズと一緒にいると、クズが空気感染するから…。昨日助けたのは、おれも轢かれかけたついでだったし、今朝だって、たまたま見かけただけ。人に深入りするのとかメンドーだから、おれには猫がいればじゅうぶん…」
主「昨日と…今朝?」
一「まぁ、運気が低迷してて、おれと出会っちゃったんだろうね。…ご愁傷様。…で、何か用なの?暇つぶしならお断り…」