第4章 ひとりぼっちヒーロー 一松
遅めの朝食を取りに、私は一人、ファストフード店に入った。
ちゃんと栄養を取れと店長に怒られそうだけど、今はハンバーガーをかぶりつきたい。
そんな気分だった。
主(なんだか昨日から、不思議なことばかり起こる…)
元はと言えば、注意力が足りなかったり、体調管理が出来てない自分がいけないのだけれども。
事故に遭いそうになり気絶。
貧血で気絶。
…我ながら情けなくなる。
主(わたし、疲れてるのかな?店長の言う通り、今日はこのまま夕飯の買い出しして、まっすぐ家に帰ろう…)
ポテトをぱくぱく口に入れながら、思い返す。
主(でも、二回倒れた時、運んでくれたのは一体誰?同一人物!?昨日、一松くんは違うって言っていたけれど…)
服に付いていた猫らしき毛も気になる。
ペットショップ勤務だから、服に毛が付くのは毎日だけど、マメに洗濯はしているつもりだ。
気を失って、目が覚めると猫の毛がビッシリ付いてるとか…どう考えても不自然である。
主(猫が集まって私を運んでくれたとか?いや、それはファンタジーすぎるよね…。猫に恩返しされるような事してないし)
ポテトを掴もうとした指が空振りする。いつの間にかハンバーガーもポテトも食べ終わっていた。
主(もうなくなっちゃった…。もっと味わって食べればよかった…)
仕方なく、ガラス越しに通りを眺めながら残ったジュースを飲んでいると、見覚えのある紫のパーカーが目についた。
主(い、一松くんだ!)
いつものように猫背でポケットに手を突っ込み歩いている。腕にはペットショップのビニール袋を下げていた。
主(うちのお店に来ていたのかな?もしかしたら、今朝の事を何か知っているかもしれない!聞いてみよう!)
居ても立っても居られなくなったわたしは、ジュースを口に流し込みお店を後にした。