第4章 ひとりぼっちヒーロー 一松
一(チッ、めんどくせーな…)
両手でトド松の手を肩から払い退ける。
一「…おれのことは、ほっといて…」
ト「で、でも!」
一「いいからっ!」
俺はそのまま部屋を出た。
ト「一松兄さん…」
お「…しばらく様子見だな。じゃっ、まずは、俺だけ紹介…」
ト「しねーよっ!」
・・・
パジャマから着替えたおれは、朝っぱらから家を出て歩いている。
一(あーダリぃ、適当にあしらうつもりがめんどーなことになった…。しばらく外で時間潰そ)
昨日の公園に足を運び、主と過ごしたベンチに腰掛けた。
一(ここで昨日、おれはあの子と…)
思い出すと、自覚出来るほど顔が熱くなる。
一(い、今思い出すのはやめよ…)
通りは通勤通学で行き交う人々が後を絶たない。
一(それを高みの見物するおれって…キングオブクズ…)
その中に、見覚えのある顔が通り過ぎて行った。
一(あれは…主?)
自分でも目ざとくよく見つけるよな、とは思う。
一(顔色があまりよくない。まぁ、おれには関係ないけど…)
と、思いつつも…
おれは主の後を歩いている。
一(…べつに、後をつけてるわけじゃないし…。ペットショップ行くから方向が同じなだけだし)
後ろから見ていても、主はフラついてて具合が悪そうだ。
声をかけたい衝動に駆られたが、ストーカーと思われて通報されるのが嫌なのでこらえた。
だけど、
一(!!)
目の前から消えたと思ったら、彼女は地面に倒れ込んでいた。
一「主!」
思わず名前を呼ぶ。駆け寄ると気を失っているようだ。
一(どこかに運んでやらないと!どうしよ…家は知らないし…。これから仕事なら、とりあえずはペットショップか…!)
周りをキョロキョロ見渡す。幸い人通りが少ない道だったので、誰もいない。
ボウンッ
おれは、もくもくと煙に包まれて猫に変身した。こっちの方が、力もスピードも出るから、何かと好都合なのだ。
一(この姿で助けるのは二回目か…。嫌じゃないけど…)
そうっと両手で抱き、ビルの合間を飛び移りながら、おれはペットショップを目指した。