第4章 ひとりぼっちヒーロー 一松
一松視点
布団に入って、もうどれくらい経ったのか…。
一(ね、寝れねぇ…!)
目を瞑るとさっきの光景が目に浮かぶ。
・・・
近所の猫に、エサをやって帰っているところに、偶然あの子を見かけて。
べつに、後をつけるつもりは無かった。
けど、方向が同じだったから気づかれないように後ろを歩いていたんだ。
すると、前から居眠り運転でフラついたトラックが見えて、
気がつくと、おれは猫に変身していた。
それからおれは、無我夢中であの子を抱き抱えて、公園にまで来た。
ベンチに寝かせ怪我をしていないか身体を見ると…
あ、もちろん服の上からだけど…
特に目立った外傷は無かった。
でも、月明かりに照らされたあの子が本当に綺麗で…。
しばらく見惚れていたのは、おれだけの秘密。
トラックが電柱にぶつかったわけだから、そこら中は大騒ぎだった。
警察が来て、人が集まって…。
それでもあの子はなかなか起きないから、ちょっと不安になった。
たぶん気絶していたのは10分くらい。
目が覚めると、よほど怖かったのか泣き始めて。
その後おれと…
一(おれが…女子とぎゅーってするなんて…。なんで、おれなんかに抱きついてきたんだ?怖がってたから、誰でもよかったのか?)
抱きしめた感覚がリアルに蘇り、その度に胸が苦しくなった。こんな感じ今まで味わったことがない。
一(おれ、なんで自分が助けたって言わなかったんだ?せっかくまた話せたのに。でも、どうせおれなんかを好きになるはずないし、言っても言わなくてもどっちでも…いいよな…)
期待と不安が交互に押し寄せてきて、どうにも落ち着かない。
一(そういえば、名前教えてもらったな…。えーと、確か…you…)
一「主…」
一(!!??)
心臓が跳ね上がる。
一(し、しまったあぁぁぁあ!!なんか声出ちゃったー!!よりにもよって夜中に好きな子の名前をつぶやくとか…もしコイツらに聞かれてたら絶対にヤバイ!圧倒的にヤバイ!)
恐る恐る左の5人を見る。
一(よかった…誰も、起きてない)
安心したら、段々と眠くなってきた。
一(主…おや…すみ…)
・・・
・・・