第4章 ひとりぼっちヒーロー 一松
一「…人のことより、自分の心配すれば?」
主「…わたしは平気です。どこも怪我してないし…。あの、あなたが助けてくれたんですよね?」
一「……」
主「…ありがとう…ございます…!」
一「!?」
涙が溢れ頬を伝う。
一「ちょ…お、おまえ!落ち着け!なんで!?」
主「よかった…すごく、すごく怖かった…!ウワーンッ!!」
安堵感からか、思わず彼の胸にうずくまり、自分でも驚くほど子供みたいに泣きじゃくった。
彼の腕が、困ったように震えながらもわたしを包んでくれる。
一「た、助けたのは…おれじゃない…。あんたが…公園で寝てるのを見かけて…」
主「…グスッ…」
一「よ、夜に女が一人でこんな所にいるなんて、危ないと思って…目が覚めるまでいただけだ…」
主「ヒック…そ、そうなんですか?」
一「……ああ」
彼がパッとわたしから離れた。
一「起きたんなら…もう帰る。じゃあ…」
そう言ってすぐ背中を向けられてしまった。
彼は、事故があったのとは反対側の出口に向かって歩いていく。
主「あの、待って!待ってください!」
声をかけると、無視されるかと思いきや、彼は立ち止まり振り返った。
戸惑っているのか目が泳いでいる。
主(思わず泣きついちゃって、嫌われちゃったかな…)
一呼吸してから、口を開いた。
主「わたしは、you主と言います!あの、お名前だけでも教えてくれませんか?」
一「……」
主(ダメ…かな…)
一「……松野…一松…」
ボソッとつぶやいてまたすぐクルリと背中を向けて帰って行った。
主「一松くんて言うんだ…」
見えなくなるまで彼の背中を見送る。
主「帰ろう、わたしも…」
バッグを取ろうと下を向いた時、不思議なことに気がついた。
服に何本もくっついている、それをわたしは指でつまむ。
主(動物の毛…?これはおそらく…)
主「猫?」
私のブラウスに、まるで抱っこをした後のように、猫の毛がビッシリくっついていたのだった。