第4章 ひとりぼっちヒーロー 一松
主人公視点
ある日の夜。
仕事が終わり、イヤホンで音楽を聴きながら帰っていた。
主(今日はあの人、来なかったな)
たまにお店で見かけるあの人は、いつも猫背で眠そうな目をしている。
この間初めて会話をしたけれど、人と話すのが苦手な印象だった。
でも、転びそうになったのを助けてくれたり、猫缶を選んでいる時に優しい表情をしているので、悪い人には見えない。
主(今度また試供品あげて話しかけてみようかな)
そんな事を考えながら歩いていると、
主「!!」
エンジン音と共に車のヘッドライトが私を照らす。
だが、フラついて様子が少し変だ。
向かってくるトラックの運転席を見るとどうやら…
主(居眠り運転!?)
突然のことに驚き足がすくんで動かない。
主(こ、こわい…!助けて…!)
思わず目をギュッと閉じ、その場に立ち竦む。
すると…
身体が浮いたような感覚を覚え…
ガシャーンッ!!
トラックが勢いよく電柱にぶつかる音が聞こえると同時に、わたしは気絶してしまった。
・・・
・・・
主「う、うぅん…」
ぼんやり目を覚ますと、目の前に砂場がある。
見覚えのある遊具…。どうやら近所の公園のようだ。
主「いつつ、あれ…わたし、確かトラックがきて…」
ベンチから起き上がり身体を確認したが、怪我一つしていない。
頭に?が浮かんだまま、再度ベンチに座ろうとすると、目に入ったのは…
主(この間のお客さん!?)
紫のパーカーを着たその人は、ポケットに手をつっこみベンチの端っこに座っていた。
主「もしかして、助けてくれたんですか!?えっと、トラックは…?」
わたしの問いに対し、無言で公園の入り口を指差す。
そこは、電柱にぶつかり頭がペシャンコになったトラックと、パトカー数台、騒がしい野次馬がひしめき合っていた。
その中には、警察と話しているトラックの運転手さんもいた。
主「よかった…あの人無事だったんだ…」
すると、ベンチからお客さんも立ち上がり、事故現場を眺めている。